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「その子、声が出ないんだ。一時的なものですぐに戻るかもしれないんだが…。シキと同じ一人っ子で、夫婦共働きだから家にはいつも一人でいるらしい。それが心配らしくてな、預けられる身内もいないからウチで預かることにしたんだ」
突然そんなことを言われても、なんと言っていいのかわからない。
反対する理由は無いが、折角また家族で過ごせるのにその子がくることによって家の中がぎくしゃくしてしまう気がする。
「母さんはこのこと知っていたの」
「ええ、母さんは良いと思うの。シキもマンションの時みたいに毎日翔くん達と遊べなくなったし」
詩織も賛成しているということは、残るは自分の意見だけ。
「僕は…」
反対の理由は無い。
自分がここで賛成すれば全てが丸く収まり、その子はここに住むことになる。
反対すればきっと圭介たちは説得しようとするだろう。
なら最初から賛成していたほうが、後々面倒起きない。
「僕はいいと思うよ」
精一杯笑顔を作って言う。
圭介と詩織も嬉しそうに笑っていた。
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