始章 ネコのちキミ

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 本当なら、僕もいつも通りそのよい子のように家でテレビでも見ていたのだろう。  だが今日は一人で数学の補習を受けていたのだ。それが原因で帰る時間がこんな時間になってしまっている。  因みにどうして一人でかと言うと、担任曰く一学期最初にあった実力テストの僕の数学が学年で群を抜いて大惨事だったかららしい。まぁ四点だったからな。  まだ一学期と言うのに進級も危ないとも言われた。全く笑えない。  ……にしても、あのメガネ先公め。  いくら僕の数字への知能が類い希に低いからって、生徒を放課後の教室に一人で休憩なしに四時間も机に座らせておくのは、もう補習を越えた体罰じゃないだろうか。  まぁ四時間もしたのは他にも理由があるんだけどさ。  そんなことを考えていると、いつの間にかもう結構歩いていたらしい。  目の前には、自宅からご近所の『花丸公園』が姿を表していた。   なんとなく足を止めてボンヤリと公園を眺める。  普段なら少々の懐かしさを感じながらこの公園をスルーするのだが、雨と言う障害による足取りの重さからか。  入り口付近の岩に刻まれた、風化して『はなまろ公園』となってしまった文字。  サビで中心に大きく穴が空いてしまい、機能を果たせなくなってしまった滑り台。  砂、と言うよりも泥に成り果てている砂場。  ブランブランコとでも改名した方が良さそうな、ひもの繋がっていないブランコ。
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