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当然、人間専用だからネコにも機能するかどうかは知らないけど、まぁしないよりはマシだろう、多分。
「それに、ほら、キミもそんなに濡れちゃってるし」
「あっ……」
彼女は今気づいたと言った風に、グショグショの服とスカートを見る。
「……やれやれ」
僕は彼女の頭の上に折り畳み傘をさす。僕サイズではなかったが、彼女が小柄なお陰か身体は傘の中に収まっていた。彼女はネコを抱いているから、傘を渡せないのでこうするしかなかった。
「あ、でもこれじゃ貴方が……」
「いいよ別に。どうせ僕がさしてても濡れちゃうしね」
ちょっとキザったらしかったような気がするけどまぁいいや。
「あ、その……ありがとうございます」
彼女はほんわりと僕に初めて笑ってみせてくれた。……それを見て、僕は恥ずかしくなって顔を反らした。
やっぱり慣れないことをするもんじゃないな。顔が熱い。
「いいって。それよりも、早く行こう。そのネコ、早く治療してあげないと」
「あっ、はい!」
彼女が傘から出てしまわないように、彼女の歩幅に合わせながら、僕は歩き出す。
やれやれ、あっという間にびしょ濡れだ。まったく、僕が誰かのために行動するなんてな。
はぁ……ホント、ガラじゃない。
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