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すべては、深夜に鳴った携帯電話から始まった。
電源を切り忘れたんかぁ……。美晴は寝ぼけまなこで携帯電話を手にとった。
耳にあてた瞬間から聴こえた声に、美晴の眠気は一気に吹き飛んだ。
『ぐすっ、もしもし……お姉ちゃん、どうしようっ……!』
相手は札幌でひとり暮らし中の妹・美月だった。
ただ事ではないと察した美晴は、長電話を覚悟し、身体を起こす。
「みつき!? なしたの? ねえ! なんかあったの!?」
ひとしきり泣きじゃくった後、美月は口を開いた。
美月は水道の蛇口を最後までひねっていなかったらしく、微かな流水に気づかず2時間ほど出かけて帰ってきたら、流し台周辺が水浸しになっていた……と。
「ベッドとかある部屋は? 確かワンルームだよね?」
寝床だけでも無事なら。 美晴は祈るような思いで訊ねるが。
『部屋もダメ……ぐすっ、水がカーペットに染みてる。玄関にも水が出てる……』
更に泣き出した美月に代わり、彼女の部屋のすぐ階下に住むという女性が電話に出た。
流し台の天井から水漏れがして、上の階へ様子を見に行くと、美月が泣きながら床を拭いていた。
今は一緒に、ありったけのタオルを使って床を拭いている。アパートの管理会社にはすでに連絡済み……と話してくれた。
「も、申し訳ありません!」
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