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風が冷たい。
対岸から風が吹いたからでも、熱で体が熱いからでもない。
ルリは紛れも無く、目の前にいる灰色のオスにその冷たさを感じていた。
「グリ、あいつを知ってるか?」
「いいえ……見た事も無いですぅ」
グリが見たことも無いというオス猫。
それがグリを狙っている。
その不気味さがルリ達に更なる寒気を与えていた。
「アンタ、何者だ?」
「戦場で死に逝く兵に名は要らぬと考える者、とだけ申しておこう」
そう返す灰色。
ルリは眉間にシワを寄せながら一気に駆け出した。
「なんだか知らねえが!」
身構える灰色に向かって一直線に走るルリ。
右からきた灰色の猫パンチを跳んで避け、後ろに回り込む。
「JI・DA・I・GE・KIの見過ぎだぜ!」
「おおっと! 待ちな」
噛みついて勝負を決めようとしたルリの動きが止まる。
声のした方を見ると、白と黒の毛を持つ初老のネコが、グリの首の裏を咥えていた。
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