8月

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  5時10分、オレは早朝練習に向かうためにいつもの道を歩いていた。 夏休みだというのに、全国大会が近いからか休みはゼロに近い。 欠伸をしながら歩いていると、十字路の横の道から誰かが歩いてきた。 オレは目が離せなくなった。 あの黒くて美しい長い髪に。 スラッと伸びた手足に。 意志の強そうな瞳に。 一瞬で感情を持って行かれた。 ぼーっとしたまま見ているとその人はある店に入って行った。 “フルール” 外から店内を覗くと、どうやらそこはカフェのようだ。 さっきの人は?と視線を巡らすと黒のエプロンを身に着け、テーブルを拭いていた。 開店前のその店は小さいが清潔感溢れる印象を与えた。 暫く見ていたが、部活があることを思い出して慌てて走って行った。  
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