9月

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  放課後、長太郎はとある店の前に来ていた。 あの人が入っていった店だ。 その店の雰囲気から、まだ出来て新しいと思われる。 フルールという名前のその店の前に立つ。 長太郎はいつも外から眺めるだけで入ったことはなかったのだ。 カランカラン 「いらっしゃいませ」 ドアを開けるとすぐに綺麗なアルトの声が聞こえてきた。 あの人だ。 長太郎以外の客はいないようで、その人はレジの奥に座っていた。 「ご注文はお決まりですか?」 「えっと…」 「お決まりでないなら、こちらがオススメです。暑い日にぴったりなんですよ。」 手で指し示されたそれは、コーヒーに凍らせたミルクを入れたものだった。 「じゃあそれを1つ。」 「あとご注文はございませんか?」 「あっブルーベリータルトもお願いします。」 「はい。こちらで少々お待ちください。」 彼女はそう言ってコーヒーを煎れ始めた。 コーヒーをトレイに乗せて、ショーケースからブルーベリータルトを出した。 それをこちらに持ってくる。 「お待たせいたしました。750円になります。」 「はい。」 「ちょうどですね。レシートのお返しです。お好きな席へどうぞ。」  
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