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おじいさんと息子さんの話はとても長引きました。もともとおじいさんは、親離れした息子さんとあまり会うことがありません。息子夫婦の方からの一緒に住まないかという話にも、決して首を縦に振ることはありませんでした。
そのおじいさんが自分から会いに来たのです。さぞ息子さんは驚いたことでしょう。ついつい遅くまで引き留めてしまいました。
「父さん、本当にごめん。せっかくの父さんの頼みが聞けないなんて……。」
玄関で頭を下げる息子さん。その精悍な顔はおじいさんにそっくりです。その後ろにはこれまたおじいさんの血筋だと分かる子供を抱いた、息子さんのお嫁さんが立っていました。
「いいんじゃ。お前たちにはお前たちの生活があるからの。わしのわがままなんぞ忘れてしっかり家を守るんじゃぞ。」
帽子を被り杖をつきながらおじいさんは言います。その顔はどこか寂しげでした。
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