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「ああ、あなたがこの子の飼い主さんですか?」
突然のことに驚くおじいさんに事務所から出てきた駅員さんが話しかけます。
「その子、夕方ごろにホームに現れましてね。電車が着く度ににゃーにゃー鳴いて、まるで人を探しているようだったんですが……。どうやら、本当に人を待っていたみたいですね。良かったな、お前。」
にゃん
駅員さんは仔猫をひと撫でし、敬礼をしてから事務所に戻って行きました。
「…こんなに泥だらけになりおって…。家から駅までどれだけ距離があると思っとるんじゃ。このばか猫がっ。」
言葉とは裏腹に大事に大事に仔猫を抱くおじいさん。バスの運転手さんに頼みどうにか乗車を許してもらいました。
「しょうのない猫じゃ。もうこんなことはするでないぞ。」
それから、おじいさんが仔猫のそばを離れて出掛けることはありませんでした。
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