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「逃げろぉぉぉー!」 酷い吹雪が止む事なく荒れている雪山で男が叫ぶ。 白銀の世界を 夥しい血が朱く染める 「セイランッ 早くその二人連れて 逃げろっ」 一人の屈強な男が叫ぶ 後ろには長い金髪の女性と 泣き叫ぶ赤子を抱き抱えた 若い青年が 頭から血を流して 膝を着いていた 「何言ってんだ お前だけでどうにか なる相手じゃねえだろ」 屈強な男の前には 熊…いや この世のものとは 思えない「何か」がいた 周りには 男達の仲間だった者達 が転がっていた 屈強な男が その「何か」から 一瞬だけ目を離した 「何か」はその瞬間 大きな口から 碇のような牙を飛ばした 鈍い音と 血が吹き出す音が 響いた 「っがぁぁぁー!」 「ロヂャァァァス!」 屈強な男の体を貫通した 「糞がぁぁぁ!」 屈強な男は そう叫びながら 最後の力を振り絞り その「何か」を掴み 崖に落ちた 「ロヂャァァァス」 「ハァ… ハァ… ハァ…」 息を切らした若い青年 あの「何か」の他に 青年を追う多くの足音 青年の腕には 先ほどの女性と赤子の 姿はなかった 何処かに隠したか はたまた 極寒の中で凍死した為 何処かに置いてきたか 足音は どんどん近づいてきている 青年は 立ち止まる 覚悟を決めたのか それとも… 追ってきていた足音が 止まった… 周りには大勢の 白銀の鎧に身を纏った 兵に囲まれた青年 「ふっ …大袈裟だな …後は任せたぞ アイカ そして… せめて…一度だけでも … うぉぉぉー!」 何かをいいかけながらも 青年は長槍を大勢の兵へ向け 戦い挑んだ…。 未来に何かを託して…
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