一番手 レッド・シグナル

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「…おいおい、探知の魔法も無しに探せって簡単に言ってくれるなよ。例の欅にいるっつっても、ダンゴムシくれぇの大きさでチョロチョロ逃げ回ってたら絶対見つけられっこねぇぞ?」 「それでも探せ」 「じゃあ、お前が探せよ。ウールフォルクは俺がやっから」 不服そうに吐き捨てるイングバーのこの言い草に、一瞬場の空気が凍り付く。 アクアは確かめるまでもなく露骨に不快感を露にしているし、珍しく隊長もピクリと片眉を跳ね上げている。 だが、しかし。 会話は続かなかった。 新たな異変が皆の緊迫感を呑み込んだのである。 ──助けて── 不意に、彼女の声が聞こえた。 今にも消え入りそうな、か細く小さい、弱々しい声。 一瞬幻聴かとも思ったが、しかし今度は確信を持ってウールフォルクのものだと言えるほど、はっきりと聞こえた。 それも、まるで耳元で囁かれているかの様な間近な感覚で。 細く小さな声量なのに、僅かに声質が震えているのが分かるくらいはっきりと聞こえた。 「……苦しいよ…助…けて……」
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