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女子の中には、王子としての雅也くんを楽しもうという集まりが結成したらしい。
だがあたしはそんなの絶対に嫌だ。
雅也くんを見守るよりも雅也くんにあたしを見てほしい。
だからこそ、メアド交換は最初の関門だったが、マヨラのお陰で難なく手に入れることができた。
あのわがまま猫を預かってよかった……、とあたしは初めてマヨラに心から感謝した。
夜のメールを楽しみに、寮へと足取り軽く帰る。
「たっだいまー」
機嫌よくそう言って部屋のドアを閉める。
今日のことをマヨラに報告すれば、雅也くん大好きのマヨラは悔しがるだろう。
そう思っていたが……。
「あれぇー……」
不自然に裏返った独り言。
ベランダに通ずる窓からは傾いた太陽が見える。
夕日で赤く染まったカーテンは風で揺れている。
どこからか聞こえる風鈴の音が、虚しく響いた。
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