7人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
僕はただ黙ってそれを見ていた
がれきの山には歴史があった
その下の死体には未来があった
でもお城に閉じこめられたルノアールには何にもなかった
賢者に作られ
命令に従い
永遠に近い命をただ他者のために捧げる
自分の意志とは関係なく
でも彼は唯一の自分の意志で動いたこの結果を
後悔し、自分を責めて
死のうとしている
…なんで、ここにきて僕の目の前で死ぬつもりなのさ
僕がはっきりと猫の言葉でも伝わるようにこう言うと
力なくルナがこちらを向いて
自嘲気味に笑いながら手を口元に当てる
『誰かに、知ってもらいたかった。
こんな自分勝手な魔法使いが自分のために人を殺し
哀れに死ぬ様を、ね。』
最初のコメントを投稿しよう!