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「のっ・・わわわ!!」 後ろからにょっきり伸びてきた太い腕が、俺の両脇に差し込まれ抱えあげられる。 びっくりしてジタバタともがけば、低く落ち着いた声で叱られた。 「覗きか?趣味が悪いぞ」 「べっ、べつに覗いてなんかないっ。たまたま通りかかってっ」 「ほう。たまたま通りかかって?」 ストン、と地面に下ろされてぐりんと回されるように声の主の正面に立たされた。 「ひっ」 熊!?こんな都会に熊がいるぞ!! 「たまたま通りかかって、そして我が柔道部の稽古を見つめていたのだな?入部したいがなかなか勇気がない照れ屋さんなんだな」 な、なにふざけたこと言ってるんだ? 俺は柔道なんてこれっぽっちも!!一ミリも!!興味はないぞ。 と、心の中で吠えたけど、白い道着を着た熊・・いや、熊と見間違えるほどの巨漢にそんなことを言う勇気はなく俺はただただ青くなってその男を見上げた。 「そうなんだ、な?」 確認するように聞かれ、細められた目がキラリと光った気がした。 ううう、無言の圧力。 「ひぅ」 俺はうなずく事も否定することもできずに、涙目で熊さんを見上げた。
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