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「まさか、本当に・・?」 日向までが俺を険しい顔で覗き込んできて、俺は慌ててそっぽを向いた。 「直!!こっち向いてちゃんと話して」 「別に。俺はただ・・」 ただ・・その先が浮かばなくて、俺は涙ぐむ。 「ただ、柔道部に入りたかっただけなんだろう?」 どこか安心感のある低い声に、俺は熊さんを見る。 熊さんの目、すべて見透かしているみたいだ。 もしかしたら、あの時の俺の視線の先に何があったのか。 熊さんは知っているのかもしれない。 なんにせよ、助け舟を出してくれたことには違いなかった。 柔道には興味はないけど…頃合を見て止めれば問題ないだろう。 「…入部、します。柔道部」 溜め息まじりに頷いた俺に、熊さんは「当然だ」とにんまり笑った。 日向は驚いたように、目を見開いてそれから自らを落ち着かせるように深くため息をついた。 「そう・・なんだ。うん。分かった」 そう言って笑った日向の顔はどこか悲しそうだった。
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