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帰り道。 すっかり辺りは夕闇に包まれていた。 俺より早く部活が終わった日向は、文句も言わず待っててくれた。 ・・なんか、変な感じだ。 いつもは俺が、日向が部活終わるの待ってるから。 お待たせって、駆け寄るのが気恥ずかしくて俺は日向から視線を外して、 「ごめん、遅くなった」 そう小さく呟いた。 「・・いいよ。いつも待ってもらってるから」 「・・うん」 会話が続かなくて、家までの道を無言で歩く。 「なぁ、なんで怒ってんの? 」 いつもなら、日向は会話に困らないように話をふってくれる。 あんまり人には見せないような笑顔で笑ってくれる。 なのに、今の日向はまるで他人と接しているときの日向みたいだ。 「別に怒ってないよ」 「嘘付け」 思わず立ち止まると、日向も足をとめて俺を振り返った。 「知らなかった。直が柔道に興味があったなんて」 「は?」 「・・柔道部に入るなんて一言も言ってなかったのに」 むくれたような日向の顔。 ああ、なんだ。 日向が不機嫌な理由が分かって、俺はへらっと笑った。 「なんだよ。日向拗ねてんのかよ?俺が相談もしないで部活決めたの。日向も子供だなー。大人になれよ」 ぼうっと突っ立ったままの日向の肩を叩けば、ふいにその手が強い力で握られた。 「そうだよ。・・拗ねてる。悪い?・・俺は子供のころから変わってないけど、直はそうじゃないんだね」 「日向・・?」 力が込められていた腕から力が抜け、日向の手の間から俺の手がするりと抜ける。 日向はようやく俺を見て、小さく笑った。 「大人にならなきゃ、いけないよね」 その顔は、泣くのを我慢して笑う子供みたいだ。 「日向…?」 「さ、帰ろう?遅くなっちゃったから急がないと」 「う、うん」 笑う日向の顔に、違和感を感じる。 なんか変だ。日向。 だけれどその違和感が何なのか分からなくて、俺はモヤモヤを抱えたまま日向の後に続いて歩いた。
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