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「わぁ…」
「わぁ…」
『わぁ、キレイなお花』
とでも続けそうな雰囲気で、マシュマロ双子先輩が見学に来た信也を見て「わぁ」を繰り返す。
部長は腕組みをして、難しい顔で信也の髪をひと房手に取り、
「貴様、日本人か?日本男児たる者、このような髪の色のはずが…」
「ボク、イタリア生まれの日本育ちナンデス」
信也は三人に囲まれ、まるでここに連れてこられた時の俺みたいに「ひくっ」となりながら即答した。
…見学一人にこのプチパニック。
「あのー、先輩がた。見学だからね。入部じゃないからね」
一応言ってみたけど、きっと聞こえてないんだろうなー。
「イタリア産まれ、ならば仕方ない!!楽な姿勢で見ていくが良い」
単純なんだか、何なんだか。
俺は苦笑して、着替えた胴着に白い帯を締めた。
「朝比奈、お前はまず基礎練からだ。道場周り3周とスクワット、腕たて、背筋20回ずつ3セット」
「えー」
「ぶつくさ言うな。ろくな運動してないからお前はそんな貧弱な身体なんだ。何事もまずは身体作りからだぞ」
貧弱な身体!!
確かに筋肉はないけどさ。
でも、あの双子よりかは…
「直くん、」
「頑張ってねー」
「ひっ…は、はい!!」
チラリと盗み見ようとして、何故か目が合う。
俺は弱冠青白い顔をした信也を武道館に残し(薄情?)、慌てて外に出た。
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