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「もうそろそろで、8月9日だな」
俺はその日、親父と焼肉を食べに外食をしていた。
そのテーブルの向こう側で、親父がビールを飲みながら、不意に口を開いた。
「あぁ、今日は8月8日だからね……で、それが?」
無知な俺は、何も考えずにそう問い掛けてしまった。
だが親父は、呆れもせずに諭すように俺に語り掛けてくれた。
「ばあちゃんはな、大変な時代を生きてたんだよ」
親父の口から出るばあちゃんというのは、俺にとっての祖母、詰まるところ親父の母親だというのは知っていたため、俺は軽く頷くだけで済ます。
「ばあちゃんが長崎に住んでたのは知ってるだろ。勿論、昔長崎に原爆が落ちたのは知ってるよな」
「うん」
「俺が子供の頃、ばあちゃんから良くその話を聞いたよ。原爆が落ちた時の話をな」
親父はタバコの灰を落とす。
「原爆が落ちた時?」
「あぁ。あの時のばあちゃんの話はリアルだったな……」
親父はタバコの火を消しながら、更に言葉を続けた――
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