NATSUMI

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少し遅めに家を出たせいか、ギリギリ電車に間に合った。 電車に乗ると、女性と男性の間にちょうど席が1人分空いている。 空席を見ると、ついつい真っ先に座ってしまうのが僕の悪いくせだ。 「あの、隣いいですか?」 女性と話す事が基本的に苦手な僕は、少し緊張しながら聞く。 すると 「あ、どうぞ。」 と女性は横に置いた荷物を自身の前に置いてくれた。 僕は軽くお礼を言って席に座る。 女性が隣にいるだけで緊張してしまうから、僕は今まで彼女が出来ないんだろう。 朝が早くて眠いのか、ウトウトしている彼女の横顔は僕の好みの顔でもあった。 手元を見てみると、彼女が持っている黒のプラスチックの教科書が入っているであろうカバンには“NATSUMI”と書いてあった。 へ~、ナツミさんって名前なのか、なんて事を思っていると、共通点を見つけた。 同じ科学の教科書。 そして彼女は僕と同じ駅で降りたのだった。 大人っぽい雰囲気の彼女とは、同じ大学だろうけどもう二度と会えないないだろう。 でも、心の片隅に“また会ってみたい”と思っている事も確かだった。
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