プロローグ

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先人の築き上げてきた文明達が母なる海の抱擁に覆われ始めてすでに半世紀が過ぎようとしていた。 『地上』という言葉の響きも懐かしく感じる様になってきている。 微かに残る記憶の中でも、地上は既に水面の下にある物として存在していた。 私の幼き頃、地面を海水がゆっくりと確実に浸食していったのだ。 「ふぅ…」 一つため息をついて背もたれに倒れこみ、 そして次に何事を書き込めば良いのか思いを巡らした。 今あるこの世界の出来事を残さねばと思い立ち日記の様な物を作りだしているのだが、しかしながら実際PCに向かってみると何を記してゆけば良いのか思い浮かばなくなる。 今更ながら自らの文才の無さに落胆を覚えてしまうのだが、そんな中でも文章を書くに当たって一つの決まり事を決めていた。 それは『当たり前と思える物こそ書く』と言う事だ。 この後、世界はどの様な運命を孕んでいるのか解らないが後世の人々がこの文章を読んだ時に 『何事が起き、 どんな生活をし、 どう生きていたのか』 それらが分かる様にしなければならないと考えていた。 然るに出来るだけ説明じみた事を書き出してゆこうと思う。
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