1 疑惑の声

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 にっこりと微笑むその顔にはまだ幼さが残っている。 「ただいま。ちょっと知り合いの子連れてきたけど、もう今日は閉めるよ」 「はい」 「純ちゃん、紹介するね。俺の恋人の怜」 「はじめまして。怜です」  恋人と紹介されて、その言葉にちくりと胸が痛んだ。  ぎこちなく挨拶をする純に、雅臣はカウンターに座るようにと背中を押した。 「何か飲みますか?」  怜の柔らかい声でそう聞かれて、答えに戸惑う。 「怜、純ちゃんにミネラルと、後はバーボンの水割りでも出してやって。こんな時はアルコール消毒だよ」  買い物袋をカウンターに置きながら優しく笑うと、雅臣は純の隣に座ってきた。 「店、閉めちゃってもいいの?」  申し訳なさそうに雅臣の横顔を覗く。 「んー。もう客も来ないっしょ。まあ、ほっとけないお客さんも来たしね」  雅臣は言わなくても出てきたバーボンのロックを舐めながら、「それで?」と、純の沈みに沈んだ表情の原因を尋ねてきた。 「うん…。もうね、何がなんだかわかんなくなっちゃって。……信じようと思うんだけど、浩哉の気持ちが分からなくて…。…ここ最近は逢ってもくれない」 「ふーん。やっぱり浩哉が純ちゃんをそんな顔にさせたんだ」 「あっ!」  自分の落ち込んでいる原因を、まずは雅臣に話していない事に気づいて、はっとしたが、なんとなく察してくれていただろう雅臣との会話は、こんな曖昧さで始まった。
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