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純より、2歳年上の雅臣は浩哉と10年来の付き合いがある。友人として、雅臣は浩哉の良いところも悪いところも知り尽くしている、数少ない理解者だ。
「なに、逢ってないの? え? じゃあ…」
「浮気されてるかもしれないって思ったら、もう苦しくて……。そんなことするはずないって信じてるけど、電話も素っ気ないし、何も言ってこないし……。昨日は女のひとと一緒だったみたいで……」
「あー、純ちゃんよ。も少し、アイツ信じてやってくんないかな? アイツあんなんだけどさ、そりゃあびっくりする程、純ちゃんにマジなんだよ」
チンとジッポライターでタバコに火を点け、ふぅっと煙を吐き出しながら、「お願いだからさ」と続けた。
「でもっ! だって、仕事が忙しいなら、そう言ってくれればいいんだ。だけど、仕事の休みの日にまで連絡付かないなんて、それってやっぱりおかしいじゃん!」
「まあ、落ち着きなって」
一気にまくし立てた純を宥めるように、両手で制して
「男っていうのはさ、どっかで真剣勝負掛けないときがあって、そんなときって、やっぱり恋人だとか、友達とか家族とか、見えなくなっちゃう時期があると思うんだよね」
わかる?と言うように、純の目を覗き続けた。
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