切なさの行方

１ 疑惑の声

　最近の純は毎日憂鬱だ。
　特に今夜は最悪な状態になっている。
　こんなに怒りがこみ上げて、体が震えた事なんて今までにない、初めての事だったから、思わず泣いてしまった。
　声を抑えようにも、自制心がいうことをきかない。
　長いまつげがふるふると震え、中性的なその顔が歪み、涙が止まらないのだ。

　原因は恋人である浩哉の態度だ。
　明日は純の２５回目の誕生日である。
　以前から、２人きりでお祝いをしようと約束をしていたのだが、ここ半月ばかり、浩哉の態度がおかしいのだ。

　付き合い始めて間もなく８ヶ月を迎えようとしている。
　そろそろ、浮気という二文字がマンネリ化したカップルに、小さな事件を起こし兼ねない時期だとも思う。
　純は、全く浮気をする気はないが、浩哉はどうだろう…。

　怪しいのは、電話を架けた時に如実に現れる。
　いつもなら、逢えない日は電話での会話が２０分以上は話をしてくれていた。だが、ここ１０日間は電話をしても、留守番電話か、繋がっても、３０秒以内……。
　しかも、上の空といった感じで、そそくさと電話を切られてしまう。