1 疑惑の声

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「……っ」  もう、我慢はしたくない。  声だけでいい。声さえ聞けたら、このもやもやした気持ちが晴れるかもしれない。  ガバッと立ち上がり、携帯を取りに寝室へ向かう。  青く点滅した携帯が、誰かからの着信を知らせていた。  駆け寄り、携帯を開く。  浩哉だ。  しかも2件の着信履歴がある。  弾かれたように、着信履歴からのリダイヤルで浩哉に電話を架けたが、浩哉が電話に出てくれるまで、純の心臓は張り裂けそうな程高鳴っていた。  そんな純の気持ちを知ってか知らずか、あっけなく電話は繋がり、いつもの陽気な浩哉の声が耳元を包んだ。 「よう純。寝てたのか?悪いな、夜中に」 「ううん。大丈夫、風呂に入ってた」 「なんだよ、言ってくれたら俺も一緒に入ってやったのに」  はははと楽しげに笑いながら揶揄う。  いつもの変わらない浩哉に、思わず口元が緩んだ。が、その後ろから浩哉を呼ぶ女の声が聞こえた。  何度も浩哉の名前を呼んでいるのが聞こえる。 「あ、わりぃ。また連絡するよ」 「あの、明日…」 「じゃあな」 「……」  何の会話も成立しないまま、また一方的に切られた。  耳の奥で、浩哉の名を呼ぶ女の声が木霊する…。 ……やりきれない。  一瞬でも、浩哉の声が聞けた事で、浮上した純の気持ちは、女の、浩哉を呼ぶ声で一気にどん底まで突き落とされたのだ。
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