1 疑惑の声

8/13
前へ
/40ページ
次へ
       何もかもがどうでもよくなってきたような、そんな気分になってる。  仕事、家族、友達、予約していたCDや浩哉の事。そして生きる事…。  たかが恋人の浮気位で、こんなに絶望したのは初めての事で戸惑ってもいる。  許す事だって簡単な事だとも思う。だけど、出来ないのだ。  心の奥からふつふつと沸き上がる不安感や焦燥感、言葉にならない感情が純を追い立てる。  街中をただぶらぶらと歩いて時間を潰すにはまだ早いこの時間で、すれ違う人も少ない。  時折、クラブのホステスやその客、またはホストや黒服と呼ばれる従業員とすれ違う。  こんな早朝にもかかわらず、ジョギングしている人も目にした。 「あれ、純ちゃん?」  突然、後ろから声を掛けられて、振り向いた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

157人が本棚に入れています
本棚に追加