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「どうしたの、その顔。なんかあった?」
一瞬、誰かわからなかったが、かけていたサングラスを外してくれて、分かった。
以前から通っていたショットバーのオーナの雅臣だ。
肩まで伸ばしたゆるくウェーブのかかった髪を掻き上げて、困った様な顔をしてる。
「いえ、なんでも……」
「ないって顔じゃないよ、どうみても」
とっさに逃げようと、身を翻してみたが、腕はしっかり雅臣に掴まれていた。
うつむいて、顔を隠す。
「まぁ、何があったかなんとなく察しは付くけど、詮索はしない。買い物帰りで店に戻るけど、おいで」
宥めるように誘われて、断るに断れず付いて行く。
だひたすら無言で雅臣の後を付いて行き、とうとう店の前まで来てしまった。
ビルの地下一階に一店舗構える造りで、雅臣の後を追いかける様に階段を降りた。
「ほら、どうぞ」
そっと背中に手を添えてくれながら、雅臣は店内へと促してくれた。
店のドアを開けると、黒とゴールドを基調としたシックな洒落た内装が純を静かに迎えてくれた。
まだ営業している筈の店内には、客が1人も居なくて、変わりにカウンターの中には華奢な、一見、クールそうな風貌の『男の子』と言っても過言ではない、まだ二十歳位の青年が純を見つめていた。
「お帰りなさい。いらっしゃいませ」
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