1 疑惑の声

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「どうしたの、その顔。なんかあった?」  一瞬、誰かわからなかったが、かけていたサングラスを外してくれて、分かった。  以前から通っていたショットバーのオーナの雅臣だ。  肩まで伸ばしたゆるくウェーブのかかった髪を掻き上げて、困った様な顔をしてる。 「いえ、なんでも……」 「ないって顔じゃないよ、どうみても」  とっさに逃げようと、身を翻してみたが、腕はしっかり雅臣に掴まれていた。 うつむいて、顔を隠す。 「まぁ、何があったかなんとなく察しは付くけど、詮索はしない。買い物帰りで店に戻るけど、おいで」  宥めるように誘われて、断るに断れず付いて行く。  だひたすら無言で雅臣の後を付いて行き、とうとう店の前まで来てしまった。  ビルの地下一階に一店舗構える造りで、雅臣の後を追いかける様に階段を降りた。 「ほら、どうぞ」  そっと背中に手を添えてくれながら、雅臣は店内へと促してくれた。  店のドアを開けると、黒とゴールドを基調としたシックな洒落た内装が純を静かに迎えてくれた。  まだ営業している筈の店内には、客が1人も居なくて、変わりにカウンターの中には華奢な、一見、クールそうな風貌の『男の子』と言っても過言ではない、まだ二十歳位の青年が純を見つめていた。 「お帰りなさい。いらっしゃいませ」  
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