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名無しの権兵衛の死に、俺がいつまでも落ち込んでいるのを見るに見かねて、母は友人から子猫を貰ってきた。
少しシャムの入った、耳と目が大きな、グレーのオスのトラ猫だった。
俺は好きな音楽のROCKと、手塚治虫の描く大好きなキャラクター間久部緑郎から取って、彼をロクと名付けた。
親バカと言われるかも知れないが、彼の愛嬌の良さといい、しなやかな体の動きといい、それはどんな猫より可愛いかった。
遊んでやるとボクシングのようなステップでかかって来るし、トイレもすぐ覚えた。
悪戯好きで賢くて人見知りしない、飼い猫としては理想の猫だった。
しかし悪戯が過ぎた。
俺が学校から帰って来くると、すぐに足に纏わり付く筈のロクが、こたつから出て来ない。
こたつの中を覗き込むとロクは小さく固まってうずくまっていた。
抱き抱えるとお漏らししているのがわかった。
床に置くとフニャフニャとへたり込んでしまう。
こたつのスイッチを入れ、その理由がやっとわかった。
スイッチは元々ONになっていた。
電気が入らないのでおかしいなと思い電気コードを触ると火花が散った。
彼はこたつの電気コードを噛んで感電してしまったのだった。翌日、俺は名無しの権兵衛の二の舞は嫌だと思い、学校を休んで一日ロクの傍にいた。
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