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拓哉、声には出さずに口の中で転がした。
さっきは思わず呼び捨てにしてしまったけど、先輩だし「さん」付けにしておきたい。
屋上から教室に戻りながらボンヤリ思った。
呼び捨てではあまりにも照れくさすぎる。
さっきの拓哉さんとの会話も、そもそも照れくさいし。
頭を撫でられた上に、耳に多分キスされてしまった。
思い出すだけで恥ずかしくなる。
なんせ、彼は男の自分でも見惚れるほどの美形なのだ。
他人をからかうような人じゃなさそうだから、きっとあれは好意の印なのだろう。
男同士だというのに嫌悪を感じない。
だからと言って、恋愛感情と結論できるにはまだ早い気がする。
教室に着いてもずっと拓哉さんのことを考えていたら、一人になっていた。
いや、一人になっても気にはしない。
移動教室のときは、いつもギリギリまで教室にいて、一人で移動する。
一時間目は選択授業で、自分は音楽を選んでいるから、音楽室に移動しなければならない。
「げっ! あいつら置いていきやがった!」
そろそろ行こうと思って立ち上がると、教室に佐藤が入ってきた。
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