山田くんと佐藤くん

3/6
1129人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
佐藤……名前は忘れたけど、彼は拓哉さんとは違う茶髪の爽やか系の美形だ。 確かバスケ部で、まだ一年なのにレギュラーをしていて、エースらしい。 クラスでも男女問わず人気があって、いつも輪の中心にいる。 そんな彼が一人でいるのも珍しい、なんて思いながら、俺は一人で音楽室に行くべく出入り口に向かう。 「あ、山田も音楽だよな?! 一緒に行こうぜっ」 素早く教科書類を準備した佐藤が、俺の隣にきた。 断る理由もないから頷いた。 「佐藤が一人って珍しいな」 思ったことをそのまま告げると、佐藤は苦笑した。 「あいつら置いてったみたいなんだよ。トイレ行くから待ってろよって言ったのに…」 ひでぇやつらだよなぁ、なんて言いながら拗ねたような顔する。 あいつらというのは、きっといつもつるんでる連中のことだ。 名前は興味ないから覚えてない。 今のところ、覚えていなくて不便を感じたことがないから、覚える気もない。 「あのさ、なんで山田っていつも一人なんだ? もしかして俺のことウザいとか思ってる?」 なんでそんなことを聞くんだろう。 思わず首を傾げ、それから否定した。  
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!