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佐藤……名前は忘れたけど、彼は拓哉さんとは違う茶髪の爽やか系の美形だ。
確かバスケ部で、まだ一年なのにレギュラーをしていて、エースらしい。
クラスでも男女問わず人気があって、いつも輪の中心にいる。
そんな彼が一人でいるのも珍しい、なんて思いながら、俺は一人で音楽室に行くべく出入り口に向かう。
「あ、山田も音楽だよな?! 一緒に行こうぜっ」
素早く教科書類を準備した佐藤が、俺の隣にきた。
断る理由もないから頷いた。
「佐藤が一人って珍しいな」
思ったことをそのまま告げると、佐藤は苦笑した。
「あいつら置いてったみたいなんだよ。トイレ行くから待ってろよって言ったのに…」
ひでぇやつらだよなぁ、なんて言いながら拗ねたような顔する。
あいつらというのは、きっといつもつるんでる連中のことだ。
名前は興味ないから覚えてない。
今のところ、覚えていなくて不便を感じたことがないから、覚える気もない。
「あのさ、なんで山田っていつも一人なんだ? もしかして俺のことウザいとか思ってる?」
なんでそんなことを聞くんだろう。
思わず首を傾げ、それから否定した。
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