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「これからよろしく」
そう言って笑いかけると、何故か佐藤は赤くなって俯き、ポツリと囁くように「よろしく」と言った。
この高校で友達はこれで二人目――拓哉さんをカウントしていいか微妙だけど――になった。
同じ中学のやつも高校にはいるけど、数少ない仲の良かった友人は違う高校になっていたから、拓哉さんと知り合うまではずっと一人だった。
一人に慣れてしまっていたせいか、一人じゃないことは幸せなことだと思った。
佐藤と拓哉さんは関係ないけど、俺が拓哉さんに運んだ幸せを、今度は拓哉さんが新しい友達という形で返してくれたような気がした。
「佐藤、仲良くなった記念に下の名前教えて?」
そう問うと、俯いていた顔を俺に向け、がっかりした表情になった。
「知らなかったのかよ……ショック」
「他人の名前を覚えるのは苦手なんだ。佐藤は目立つやつだから、名字だけは覚えてたんだよ。下の名前で呼んでるやついないし、フルネームを覚える機会がなかったから」
「じゃあ、今覚えてくれよな。俺は佐藤浩介。よろしくな」
佐藤浩介か、ちゃんと覚えなきゃな。
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