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きっと名前でからかわれ続けているせいで、わざと皮肉を込めた自己紹介だったんだと気づいたのは、少し時間が経ってからだ。
それからずっと山田が気になり出した…。
俺がバスケ以外でこんなに興味を持つのは初めてのことだったと思う。
平凡な容姿の山田のどこが俺を惹きつけるのかわからないけど、あいつと仲良くなりたいってきっかけを探していた。
だから、移動教室で俺を置いていったやつらに感謝したくらいだった。
話してみると山田……いや、隆夫は普通のやつで、人付き合いは面倒だからしないってだけだった。
俺は音楽の授業を終えるなり、一番気になっていたことを聞くことにした。
「俺さ、ずっと気になってたことあるだけど」
「何?」
教室に向かいながら、俺はいつものようにお調子者を演じつつ問う。
「あのさぁ、いつもかなり早い時間から学校いるじゃん? どこで何してんの?」
俺の言葉に、隆夫は目を丸くした。
「気づいてたのか?」
「言ったでしょ? ずっと仲良くなりたいって思って見てたんだよ」
と言いながら、まるで口説いてるみたいだと思った。
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