山田くんと木村さん

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屋上は不良の溜まり場。 誰が決めたか知らないが、うちの学校もそうだったらしい。 らしい、と言うのは体験するまで知らなかったから。 「気持ちイイー」 馬鹿と煙は高いところが好き、だなんて言わないでくれ。 その馬鹿に当てはまる俺は、朝のSHRより少し早めに登校し、屋上で深呼吸するのが日課だった。 本当に馬鹿馬鹿しい考えかもしれないけど、屋上は学校という鳥かごの中で、唯一自由を感じさせるから好きな場所だ。 いつも一人でこの空間を満喫したあと、自分のクラスに戻るのだが、今日だけは違った……。 「誰だ?」 「えっ?」 フェンスにもたれて座り込んで空を見ていた俺だが、声をかけられ、入り口に視線を落とす。 綺麗な金に染め上げられた髪と、耳にいくつもあるピアス。 見るからに不良だが、整った顔に長身の男前美形。 表情に怒りは読み取れないから、俺がここにいることに怒ったりはしていないだろう。 別に、縄張りってわけじゃなそうだ。 「山田太郎」 「山田、か」 適当に名乗った名前を信じたらしく、特に怒ることもなく、彼は隣(友達同士の距離)に座った。  
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