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きっと女の子なら簡単に落とせる科白も、隆夫には通用しない。
隆夫が女の子だったら良かったのに…なんて思ってしまって、慌ててその考えを否定した。
まるで俺は隆夫に恋をしてしまったみたいじゃないか。
「誰も俺のことになんか興味ないと思ってたよ。俺は教室じゃ空気みたいにしてるし。しかも、気づいていたのがお前なんてびっくりだし。浩介って意外と気配り屋なのか?」
この科白にどう反応していいのか…二人きりなら本性を晒け出しちゃってもいいような気がする。
でも、ここは廊下で、誰が何を聞いてるかわからない。
「やだなぁ、俺は気配り屋なんかじゃないよ。隆夫以外のやつだったら多分気づかなかったよ~?」
この科白は確実に本音だ。
ただ、言い方を軽くしたから、冗談としか思わないだろう。
それを狙ってるんだから。
「でも、お前が教室にくるのもそんなに早くないよな? なんで知ってるんだ?」
「俺さぁ、天気悪い日は親に送り迎え頼むんだよ。普段はチャリ通なんだけど。んで、親に合わせた時間って朝練には丁度良い時間だけど、学校に普通にくる分には早い時間なんだよね。テスト期間中は部活停止になるから、そのときに天気が微妙な日があって、仕方なく朝早く教室に入ったと思ったら、お前のカバンはすでにあったってわけだ」
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