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そう問われて、話に脈絡がないことに気づいた。
「すみません。そのことじゃなくて…目です」
「目?」
「カラコン、似合ってないです」
俺って…後先考えず物事を言うやつだった。
いくらなんでも失礼すぎな発言だろ。
「はは、そうか」
でも、木村さんは笑ってカラコンを外し始めた。
だから、俺はホッと一息吐いて、調子に乗る。
「ついでに言えば、金髪より黒髪が似合うと思うし、ピアスもつけすぎだと思う」
ほ~ら、言いたいこと言ったらすっきりするじゃん。
俺がね。
木村さんは鳩が豆鉄砲喰らったような顔で固まっていた。
美形はどんな顔をしても美形だってぼんやり思った。
木村さんが固まっているから、手持ち無沙汰になって携帯をチラ見すると、朝SHRの10分前だった。
「俺、もういきますね」
走るのは嫌だから、いつも余裕を持って10分前に屋上を去る。
それも日課のうちだった。
「あ、また逢えるか?」
豆鉄砲から復活した木村さんが俺に声をかけた。
「俺はいつもここにいます」
そう告げて、俺は屋上を去った。
次に逢ったときは本名を教えてあげよう、なんてボンヤリ思いながら……。
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