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「はは、俺の本名は山田隆夫って言うんです」
諦めたように山田は言った。
「山田隆夫?」
「そう、座布団と幸せを運ぶ山田隆夫ですってね。だから、言いたくなかったんですよ」
笑点の座布団運びの彼と同じ名前だったのか。
「有名人と同じ名前は不便だな」
「ですよね。木村さんは木村拓哉と負けず劣らずかっこいいからまだいいじゃないですか。俺なんて座布団運びですよ?」
皮肉そうに笑う山田。
思わず頭を撫でたくなり、無意識に手を伸ばした。
山田は驚いたけど、手をよけたりはしなかった。
「俺はお前が山田隆夫で良かった。お前は座布団は運ばなかったけど、お前とこうしてると楽しい。楽しいって思えるのは幸せなことだろ? 山田隆夫は俺に幸せを運んできてくれた」
頭を撫でながら、山田に笑いかけると、彼も笑った。
笑顔も可愛い。
「木村さんは…よくも照れずにそんなことが言えますね。でも、嫌じゃないです。拓哉、ありがとう」
初めて「拓哉」って呼んでくれたと思ったら、真っ赤になって俯いてしまった。
「隆夫も、ありがとう」
隆夫が愛しくなって、耳にキスをすると、隆夫はポケットから携帯を取り出した。
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