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風見学園生徒会副会長の高坂 まゆきは夜の街を走っていた。
後ろから何物かが追って来る気配がする。
「何だっていうのよ……もう……!」
すでにかなりの距離を走っているのだが、さっきから誰とも会わない。
陸上部に所属し体力に自信のある彼女だが、すでに息があがっている。
「あっ!」
何かに躓き転んでしまう。さらには右足の太腿に鋭い痛みが走る。
「足が……!」
あまりの痛みに痛ささえ感じない。
動かそうとするが、地面に縫い付けられたかのように動かない。
あれが近づいて来る気配がする……。
恐怖で振り向くことが出来ない。
あれが背後でぴたりと止まる。
一撃で自分の命を奪うつもりなのだろう。
目をつむる。
「ギョオオォォアァァ!!」
この世のものとは思えない悲鳴のようなものが聞こえた。
「え……?」
振り返るとそこにはあれの姿は無く、代わりに黒い外套を纏った人が立っていた。
あれは始めからいなかったかのように残らず消えていたが、足の傷があれが現実のモノだったことを証明している。
目の前の人物が振り返る。
その右手には紫色のまがまがしい形状のナイフが握られている。
まゆきは身の危険を感じ、座ったまま後ずさる。
が、相手は容赦なくナイフを彼女の右肩に突き立てた。
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