第一章 鶯の鳴く庭

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随分広い敷地です。 母屋に……ああ、あっちが被害者の亡くなった茶室のようです。 母屋から庭に敷石が置いてあり、それが敷地内にもう一つ造られた小さな建物に続いています。 綺麗な庭です。日本庭園という言葉がピッタリです。 庭には小さな池があって綺麗な鯉が泳いでいます。 水の中は気持ち良さそうですね……。 ……部下君に呼ばれて池の中を覗いていたあなたは渋々現場に向かいます。 鑑識さんたちがウロウロしながら指紋を取ったり、写真を撮ったりしています。 茶室……上がり口と、一部屋しかないんですね。 上がり口から茶室を覗くと新しい畳の青臭い匂いがふわりと漂います。それに混じって微かな血の臭い……金臭い臭いにあなたは眉を潜めました。 部下君は上がり口で靴を脱ぎズカズカと上がって行って、先発隊の警察官と何か話をしています。 上がり口に女性物の草履が一足揃えて置かれています。 被害者の物でしょうか。淡い鶯(うぐいす)色の履物です。
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