第2話 守護なる天使

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「いい? そもそもメイドが最もその名を馳せたのはイギリスにおける、ヴィクトリア女王の在位した時代であり、大英帝国の絶頂期でもある19世紀のヴィクトリア朝時代なのよ。この頃の英国は国内でのメイドの雇用率もピークであり、その結果ヴィクトリア様式のメイドがそのデファクトスタンダードになったものと考えられるの。ヴィクトリア朝は産業革命と自由貿易によって変化と革新に彩られ、イギリスの国力が最も充実した時代なんだから。でもその反面、貴族達の古い生活習慣と階級社会も根強く、特に“階級の上昇志向”が極めて高いという特徴があったわ。  当時の人々は少しでも上層の階級に加わる事を願い、その為には多少の無理を伴ってでも、自分を実際より上流に見せようとしたのよ。まぁ、単なる自己満足なんだけど。これによって“スノビズム”っと呼ばれる“紳士気取り”の風潮がこの頃にでたのよねー。  そしてその紳士のステータスの一つに“使用人を雇うこと”があって、当時、男性使用人に比べ賃金が半額以下だった女性使用人の雇用は加速度的に進むことになったわけ。その方が費用は少なく済むしね。  こうして、女性使用人──つまりはメイドの姿が多く見られるようになり、この時代の英国の背景を彩っていったってわけよ!  ちなみに、メイドは正しくはメイドサーヴァントと言って、家政婦や女中など、様々な訳され方をされているわね。一般的にメイドは家事の全てを担う者と思われがちだけど、一言でメイドといっても実際はそうじゃないの。その職種はさまざまにあって、メイドを雇う家庭の程度によって変わるわ。  俗にメイド長と呼ばれるハウス・キーパー。主人の身の回りの雑用をするレディース・メイド。来客の取次ぎや、客間での食卓の準備や給仕を行うパーラー・メイド。女中頭の指揮のもとで、館の管理に必要な作業を行うハウス・メイド。乳母の補佐をするナーサリー・メイド。洗濯場にて洗濯を行うランドリー・メイド。料理人の下で厨房の作業を行うキッチン・メイド。洗い場で食器を洗うスカラリー・メイド。そして、全ての仕事を受け持つメイド・オブ・オールワークス。世間一般のメイドのイメージとしては、このオールワークスが該当するわね。……って、ちゃんと聞いてるの? メタトロン」
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