第2話 守護なる天使

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 訴えるようにバシバシとバイクを叩く久魅那。もちろん、鼻にティッシュを詰め込みながらだ。 『……メイドについての講義はそれくらいにして、とりあえずワタシについた鼻血を拭いてください。渇くと汚れが落ち辛くなりますので。……というより、今の状況を確認してください、マスター』 「ん?」  言われてバイクについた鼻血を拭きながら、久魅那は数メートル前に佇む甲冑兵士達に目を向ける。  視線を向けられた甲冑兵士達は先ほどの鼻血を思い出さないようにか一歩前へ踏み出す。 「あぁ、そういやあんなのも居たわね。大きなオブジェかなーっと思っていたけど」  まるでただの置物の存在に気付いたような台詞。実際、先ほど建物から飛び出して一瞥したときにはただのオブジェにしか見えていなかったのだろう。久魅那が構える理由は無かった。 『生体スキャンした結果、あの兵士達からは生命反応がありません。赤外線スキャン、X線スキャンを試みましたが、腕などには武装に使用すると思われる機械部は確認。ですが胴体部に機械的な骨格構造は皆無。しかし胴体部からは熱源を探知。おそらく動力炉かと。動力炉からはデータには無いエネルギー反応が見られます』 「ふぅん。まぁ、あんなデカイ鎧に人が入っている方がおかしいけどねー。……えーと、とりあえずお嬢ちゃん?」 「え、あ、はい」  突如話を振られ、少女は驚きながらも返事を返す。 「あたしの名は天璽久魅那。君のお名前は?」 「えと、真珠(しんじゅ)、です」 「なら真珠。単刀直入に聞くわ。――あいつらって悪い奴?」 「えと……。はい!」  少女――真珠が頷くのを確認して、久魅那は鼻に詰めていた血だらけのティッシュを外しポイッと捨ててバイク戦車を降りる。その表情に不敵な笑みと一緒に口の端がつりあがった。 「おーけい、おーけい。メタトロン、真珠をお願い」 『了解(ヤー)、マスター』  主が乗っていないバイク戦車が後方にいる真珠の傍までバックした。少女の前に居るバイク戦車はまるで大きな盾か壁のようにも見える。 「さぁて、あんた達……」  ゆっくりと甲冑兵士の方へ歩む久魅那。その両手は拳となっている。
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