24人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんた達なら知っているのかしら? あたし達が何故この世界に来てしまったのかを。……説明してもらうわよ」
それを拒否するかのように甲冑兵士達はさらに一歩前へ踏み込む。
と、見ていた真珠は慌てて声をあげた。
「だめ! その機械人形(マシン・ドール)たちの装甲は頑丈なの! だから生身で戦おうなんて無茶よ」
真珠の叫びが合図となったのか、互いにほぼ同時に走り出した。
そんな……、と呟く真珠にメタトロンは笑うように答えた。
『大丈夫です。ワタシのマスターは伊達ではありませんよ』
「え?」
真珠がその言葉の意味を理解するまえに、既に戦いは始まっていた。
一体の甲冑兵士――機械人形(マシン・ドール)――が両手に握った斧を大きく振りかぶって、こちらに走ってくる久魅那へ一気に振り下ろした。
ズンッと斧が大地に落ちる。それはあたかも西瓜を割るような勢いで。だが、地面に食い込んだ斧に久魅那の死体はなかった。
機械人形には久魅那がどう回避したのかが見えなかった。ただ、唯一認識できたのは、久魅那がいつの間にか己に背中を向けて懐に潜りこんでいたこと。
相手に背を向けたままの久魅那は突如、左足を後ろへ引いて爪先を機械人形に向けた。そして、上半身を捻るように振り返らせた。その脇の下には構えていた右拳が……。
「一閃、疾風! ―――正拳突きぃぃぃーー!!」
捻り込むように一気に拳を放った裂帛の気合の直後、ドンと空気が震えるような音が響く。
正拳を叩き込まれた機械人形は押されたように二歩後退した。その鎧の中心、拳が放たれた場所は大きく凹んでいた。
「…………うそ。普通の人間の拳で機械人形(マシン・ドール)の装甲を凹ますなんて……」
それを見た真珠は驚きを隠せず大きく目を見開きながら呟いていた。そこへメタトロンが追い討ちをかけるかのように一言注ぎ足す。
『今のを普通の人間に叩きつけていたら、間違いなく肋骨を複雑に骨折されて内臓はズタボロでしょう。何せアレの破壊力は二トンに及ぶので』
「に、とん……!」
真珠はもはや絶句するしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!