第2話 守護なる天使

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 だが肝心の久魅那は今はその場にうずくまり、右拳の上に左手を重ねていた。 「いったぁ~。やっぱ見た目どおり固いわねー。発勁(はっけい)を足しても貫けないとは……」  発勁とは、“勁を発する”という意味の中国武術のことだ。この技法は、至近距離であっても相手を吹き飛ばす (密接していれば押し飛ばす) 程のエネルギーを発する。  特徴は、重心の落下 (ポテンシャルエネルギーの使用) 、急激な運動量の増加 (主に加速。遠心力を使う場合もある) など様々な方法で自らの重心を移動、またその“重み”を加速、さらに体を捻る (纏絲勁) 、踏み込む (震脚) など様々な技術により、運動エネルギーを集中させ、威力の増加を図っている点にある。  久魅那が行った発勁は、振り向きによる遠心力のエネルギーを利用したものだ。……だが、それだけで先のような威力が果たして出るのだろうか?  彼女の場合は八極拳ではなく、基本は空手である。しかしそれを、彼女は独自の解釈や、個人的な趣味である特撮系番組の影響、そしてその中で一番影響しているのは元来の才能と彼女だけが持つ“特殊な力”が大きくあった。 「……ふむ、これじゃあ蹴りでもあんまり変わんないかもね」 『っていうかマスター。スカートで蹴りは止めてください。モロに見えます』 「大丈夫よ。見えてもいいやつ穿いているから~♪」 『そういう問題では……』  まるで頭を抱えていそうな程の溜息がメタトロンから漏れる。もはや日常茶飯事なことなので今更言っても無駄だと分ってはいるものの、やはり溜息は出るものだ。後ろで見ている真珠も苦笑を隠せなかった。 「にしても機械人形ねー。名前どおり、機械のようにただ戦うだけの操り人形。そのまんまだわ。でも中身が機械じゃないのはちょっと残念だけど」  前を見据える先には、態勢を整えた先ほど装甲を凹まされた機械人形や他の機械人形たちが再び構えている。 「まっ、このままの状態でやっていても埒はあかないわよねー」
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