第2話 守護なる天使

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「ほんとに中には機械なんてなかったわねー。動力炉一つでどうやって四肢を動かしているのかしら?」  そんなことを言っていた直後、そこに佇むエリヤの背後から槍を持った機械人形が襲い掛かった。すぐに気付いたエリヤが突き出された槍をかわすと、ジャンプして機械人形の頭部より少し高い位置にまで跳ぶ。  空中で右脚の膝を曲げ、エリヤは叫んだ。 「アイオーン――!」  すると右のレッグパーツの前部と左右側面の外部装甲がロック解除され展開。それぞれに内蔵されていたパーツが膝上部までスライドし合体。膝に固定される。  それは先端を中心に縦に三分割されていたドリルであった。それが膝上で一つとなり、鋭利な回転衝角となる。  ちなみに、この武装起動に生じた時間は僅か〇.六秒である。 「――ドリルッ!!」  右膝を叩きつけるように、大回転迎撃衝角アイオーン・ドリルが高速回転をしながら機械人形の頭部を穿った。  頭部を失った機械人形は数歩後ろに下がったあと、力尽きたように機能停止して倒れる。  エリヤが着地する直前、即座にドリルは再び三つに分解されてレッグパーツの中に収納されていた。  そのエリヤが槍の機械人形と戦っていた最中、M1対戦車ロケット発射器――通称、バズーカ砲を装備した一体の機械人形が真珠の方へと向かっていた。  察知したのは真珠を守っていたバイク戦車メタトロンだった。 『真珠、少し後ろへ離れていてください』 「う、うん……」  ゆっくりと下がる真珠を確認して、メタトロンはバイクの前部に内蔵されているカメラで敵を確認した。 『対戦車用バズーカですか、ワタシあての挑戦状でしょうか?』  それはまるで笑っているように聞こえた。しかし、人工知能を搭載しているとはいえ、それはあまりにも人間くさかった。 『ワタシに対して対戦車戦術を用いられてはナメられたものです』  そう、メタトロンは普通の戦車ではなく、ましてや普通のバイクではないのだ。あくまでこの機体は“守護三輪駆動武装戦車”なのだから。
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