第2話 守護なる天使

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 …………  ……  …  先ほどまでの戦闘が嘘のように、今は静けさを取り戻していた。  あたりに散らばっているのは機械人形たちの残骸である。  その全てをエリヤとメタトロンが破壊したのだ。  エリヤは敵がいないことを確認すると、契約の天使鎧(ディアテーケ)を光輝かせる。そして光が弾けると機械服は消滅し、もとの白い制服姿となった。 「……さてと」  元の姿に戻ったエリヤこと久魅那は、目の前で倒れている機械人形の残骸から一つの部品を拾う。それは動力炉であった。まだ僅かばかりエネルギーが残っているのか、ほのかに淡い光を放っている。 「真珠、機械人形について知っているみたいだから、ついでにコレのことも教えてもらえる?」  動力炉を見せるように真珠へ向けると、真珠はゆっくりと答えた。 「それは、機械人形たちの心臓。中には情報魔術が込められているの」 「情報魔術?」 「そう。この情報世界エウクセイノスにおいて情報(プログラム)は全ての存在の定義に値する。全ては情報で紡がれ、個は情報で派生。このエルブルズではそういう世界法律(ルール)でできているの」 「エウクセイノス? エルブルズ? ルール? えーと、つまり……」 『事象、事物、過程、事実などのデータに概念を埋め込み、一定の時空の中において特定の宇宙が構成されている。それがこの情報世界エウクセイノスであり、唯一基盤となるのがこの都市エルブルズ。情報魔術とは、演算・動作・通信などの処理を行うためのプログラム言語を人語に置き換え、それを魔術の力により簡易的かつ高レベル化させたもの。動力炉は主記憶装置(メモリ)の役割を持ち、命令とデータを区別することなく格納し、データを命令として解釈実行するシステム。――これで合っているでしょうか?』  久魅那が考えるよりも早く、メタトロンが答える。 「うん。まぁそんな感じ」  と、真珠は頷いた。  そんな感じと言われても久魅那にはさっぱりであった。頭の上には疑問符が浮かんでいる。
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