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己のマスターが脳内処理に熱をかけ過ぎてオーバーヒートする前に、メタトロンが話題を変えた。
『ところで真珠。貴方は何者なのですか? 先ほどから生体スキャン、赤外線スキャン、X線スキャンにも反応せず、しかしそこに存在しているようですが……』
それに関しては久魅那も同意見であった。かつて天使と契約した久魅那は身体能力の飛躍と同時に、超感覚能力も持ち合わせていた。いわゆる第六感みたいなものであるが、それですら真珠から生命反応というものが感じられなかった。そこにいるはずなのに、何処か別の所にいるような不可識な感覚。
「それに関してはまだ言えないの。でも……」
真珠の顔がとある方角へ向けられる。久魅那がその視線を追うと、その先には巨大な時計塔があった。
「そのうち話せると思う。……うん。私はそう信じている」
力強く頷く真珠。しかし久魅那にはまだまだ分らない事だらけだ。
だが久魅那が疑問を口に出す前に、真珠の体に突如、ノイズのようなものが走った。
「あっ、もう時間だ。ごめんね久魅那お姉ちゃん。私ちょっと用事があるから今はこれで失礼するね」
「ほえ? 用事? っていうか真珠、アンタまさか?!」
にこっと微笑む真珠は、次の瞬間には消えていた。まるでテレビの電源を切ったかのように。
数秒その光景に沈黙していた久魅那であったが、すぐに我を取り戻して相棒に問う。
「メタトロン。真珠って……」
しかし、人工知能の相棒は冷静に答えを導き出す。
『おそらく実体化モジュールによる半物質化映像だったのでしょう』
「あー、やっぱり実体じゃなかったんだ」
先ほどからの不可識な感覚はこのことだったんだと久魅那は一人納得した。
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