第3話 凶熱の魔術師

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「驚かないんですか?」 「ふん、この俺に気づかれずにこんな場所に招待するような輩がいる時点でたいそう驚いた。今更小娘一人が出てきたところで驚くような心臓はしてねぇな」  皮肉げに唇を笑みに歪めるエルムゴートは、表情を改めて目の前の少女に目を向けた。葉巻を吐き出し、言う。 「で、……その衣装になんの意味があるんだ?」 「……あれ。事態に関する説明を求めず最初にそれを質問するんですか?」  エルムゴートの一番最初に提示された質問の言葉にその少女は少し戸惑ったような表情を見せながらも、とにかく何か言おうとしたらしく、彼女はその唇を動かそうとした。  その時。まるで画像ノイズに似た、稲光が一瞬視界の端に写った。 「情報魔術の物理収束を確認、……来た?!」  少女の唇から驚愕に満ちた呟きが漏れ出る。  彼女のその表情に片眉を吊り上げたエルムゴートは、視線の先を追い口笛を漏らし、楽しそうに笑った。  最初、それはただの砂のようにしか見えなかった。  風に吹かれ飛ぶような細かい粒はしかし、まるで何者かの意思に従うようにひとつに結合していき、何かの形をとろうとする。
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