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それは宇宙における第一象限、もっとも根源に近い世界であるが、また同時に最も根源から遠く、次元と次元の狭間に位置する情報の海より発生した完全なる異質な情報世界『エウクセイノス』。
エウクセイノスにある世界とは、石造りや木造の建物がある円周情報都市『エルブルズ』だけである。それ以外の場所は元より存在していない。
次元の波の真っ只中に位置し、あたかもそこを浮遊しているかのような、まるで庭園とでも見えるその世界の中心に、巨大な時計塔がそびえていた。
時計塔の名は『オルドリン』。
その中では複雑に組み合う機械類が軋みをあげながら一刻一刻と時を刻み続けている。
時を刻む機械の規則正しい音だけが全てを支配しているこの空間に、一人の女性がいた。
三十代前半ぐらいだろうか、黒みがかかった紫色のセミロングの髪に若干やせ気味の細い体。優美なドレープで胸元セクシーなホルターカットソーとサイドレースアップからパイソンが覗くタイトスカートを身に着けていて、それを真っ黒なマントが覆っている。
何故マントを着ているかというと、おそらく魔術を扱うものとしてこれだけは必須物であったのだろう。
……そう。彼女は魔術、それも超次元的な高度魔術を駆使する大魔術師。
彼女の名はイシス・テレジア。この情報世界エウクセイノスの支配者だ。
現在イシスはオルドリンの最上階にある広大なホールの中心に立っている。
正面上には壁自体が時計となっており、一から十二までのローマ数字とそれを示す長針と短針。時計塔外部と内部の両面に時計はあるのだ。
その両方を、時計塔を構成する歯車らが正確な時刻を示している。
イシスの目の前には宙に浮いている人間大のサイズのクリスタルのような結晶体があった。それは青っぽい色をしながらも透明で、神秘的な輝きを醸し出している。クリスタルの下部には大量の太いコードが接続されており、それが壁時計の真下にある小さな隅間にも思える小ホールへと伸びている。小ホールは薄暗く、コードが一体何に繋がっているのかが分かりかねない。
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