24人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
物陰に身を潜ませた青年が、頭を抱え込んでしゃがみこむ。
どれくらいそうしていただろうか。
濁った風の中、ふと彼の鋭敏な嗅覚が誰かの臭いを嗅ぎ取った。
とっさに顔を上げ、僅かに見える隙間から、道の向こうの様子を伺う。
クルーガーの潜む場所は、通りと思われる道に面した建物と建物との隙間だった。その影の中に気配を消して潜む彼は、ただでさえ弱い光が届かない場所からじっと臭いのする方向を見つめた。
霧に包まれた向こうから、確かに誰かの足音が聞こえる。
姿は見えないその相手に、裸エプロンという犯罪的な格好のまま、どう対処すべきか、クルーガーは奥歯をかみつつ苦悩していた……。
最初のコメントを投稿しよう!