第1話 全ての流れは針が刻みて……

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 右手に持つ先端が槍のような鋭い刃物に多少の装飾がされた杖を、イシスはクリスタルへ向ける。杖全体がほのかに輝き、彼女の斜め下の胸あたりの高さの所に緑枠の平面状のパネルが宙に浮かんだ。パネルの中には何処かの映像が幾つも切り替えられ表示していた。それを見ながら彼女の口が開く。 「ウルム・アト・タウィルのS型次元監視艇…………確認なし。状況適正を認識。……空間座標を固定。プロセス開始。コード1032(ヒトマルサンニ)から8794(ハチナナキュウヨン)までを同時進行。時空湾曲境界線の揺れを誤差自動修正。結合ポイントはA08からW375まで」  紡がれるは情報(プログラム)魔術だ。この情報世界においてプログラムは全ての存在の定義に値する。  全は情報で紡がれ、一は情報で派生。クリスタルは情報解析及び実行。さらに輝きを増し、やがてそれはエウクセイノス全体にへと影響を及ぶ。  エウクセイノスを覆う次元の波に異変が起きた。  まるで地震のような音を響かせ、次元の波のところどころに青白いプラズマが生じている。 「次元交差線に介入。上軸、下軸、混ざり、融合し、狂い、時間、空間、全てを同調(シンクロ)。……実行!」 クリスタルがさらに輝きを増し、先端より眩い光の線が天井へ向けて走った。  光の線はオルドリンの天井を通り抜け、上空の次元へと突き刺さり、その光は全ての次元の波へ波紋する。  空間が裂け、次元が捻じ曲がった。  膨大な力の奔流が次元の彼方より流れ込んでくる。
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