第2話 守護なる天使

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 深い霧の中からエンジン音と大地を走る轟音が響いていた。  ソレは悠然と、または我が道を往くかの如く堂々とした走りだ。  霧の中、ソレはシルエットでしか分からない。大きな何かの乗り物であることしか判別はできかねないだろう。ただ、ソレに乗っているのが女性であることはどことなく確認はできそうだった。何故なら、その搭乗者の影からは後ろへ流れるような長い髪が見受けられるからだ。それが男性という可能性も無いことも無いのだが、確立としては女性の方が高い。  少しするとその深い霧は徐々に薄れていき、やがては消えかけた所で、ソレに乗っていた彼女は慌ててソレをドリフトをさせながら急停止を掛けた。  しばらくそのままの状態でいると霧は完全に晴れた。  霧が無くなったことによって、彼女の容貌がはっきりとわかる。  揃えられた前髪に、背中に流れる癖のない艶やかな黒髪。どことなく気が強そうな黒い瞳。華奢でスタイルは良く、白いベストにミニスカートとブラウスという何処かの学校の制服を思わせる服装である。  そして、彼女が乗っているものは一台の超大型三輪バイク。だがそれはただのバイクではない。超大型三輪バイクをベースとして、左右には重装甲戦車のキャタピラが取り付けられていた。  そのキャタピラの装甲上部、まず右側には三メートルはある白く細長い砲塔。左側には砲身長二.〇五メートルの六銃身二十ミリ機関砲が備え付けられており、バイク部の後部には大きなウェポンコンテナが設置されている。  全長約五メートル、全幅約三メートルという巨大な三輪バイク武装戦車がそこにいた。 「……どういうこと、これ。さっきまで砂漠を走っていなかったっけ?」  周りの光景に彼女は目を見開く。  視界には石造りや木造の建物が建ち並び、彼女が居る場所は円形にくり抜かれた形をした広場であった。 『確実な回答は不能』  どこからか、彼女以外の別な女性の声が聞こえた。だが、そこにいるのは彼女一人だけだ。答えられる人間は何処にも居ない。
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