握手をする人達

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 「ほら、こいつでどうだ!」  「くそっ。またお前の一人勝ちかよ」  ひっそりと黙っている夜の森。月までもが身を隠す中、数人の男達が、焚火を囲み、ポーカーをやっていた。  「ディック、お前イカサマしてないだろうな」  「はっ!冗談だろ?俺は今日女神に愛されているんだ。無遠慮な詮索はよしてくれ」  「それよりお前ん家の女神を愛でてやれよ」  「やだよあんな古女房。いじる気にもなんねぇや」  ハハッ、と笑い声が生まれ、もう一試合しようとした時、隅で銃の手入れをしていた年配の男が、じろりと彼らの方を見た。  「だがお前達、俺達の仕事を忘れるなよ。何故ここにいるのか良く考えろ」  男がそう言うと、ポーカーをしていた彼らは、しん、と押し黙って視線を焚火に落とした。  「分かってますよ隊長。そいつを忘れた事なんてありません」  「そうです隊長。ここにいる連中も国の奴らも、皆隊長と同じ気持ちですよ」  「そうか……。愚問だったな……」  薪が炎に急かされ、パチパチと揺らめく。森と男達は焚火を眺め、炎は沈黙を燃やす。  「故郷のために」  一人が酒の入ったコップをすっと持ち上げた。周囲はそれに少し驚いていたが、次々とそれに習う。  「家族のために」  「子供達のために」  「平和のために」  「明日のために」  隊員達がコップを全て掲げ終わった後、隊長は真剣な表情で、重々しく口を開いた。  「ディックの女神のために」  暫く気休めの静寂がその場を支配していたが、ぷっ、と誰かが吹き出したおかげで、焚火の周りは爆発のような笑いに包まれた。ディックは顔を赤くして頬をポリポリ掻いている。隊長も一緒になって笑い、酒を飲み、ポーカーをやった。ふと夜空を仰ぎ、呟く。  「うまくやってくれよな、賞金稼ぎさん……」  黒いスポンジに吸い込まれ、夜はどんどん更けていく。
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